日本の大手釣具メーカー3社の売上、事業内容などをまとめてみました。
国内ではシマノ、ダイワが釣り竿、リールともに双璧であり、皆さんにとってこの2社が最も馴染み深いのではないでしょうか。釣りを始めるとなればまず揃えるのはロッド、リールなので、やはりこの2社の存在感はとてつもなく大きいですね。
"ダイワ"は株式会社グローブライドが手がけている釣り具ブランドです。この記事ではこの2社にティムコも加えて最新の業績、事業などを分析します。”ティムコ”と言われてもピンとこない方も多いかもしれません。シマノ、ダイワと比べれば売上高や市場シェアといった面で差がありますし、他にもがまかつやジャッカル、メジャークラフトなど有名な釣具メーカーも数多くあります。しかし、これらの3社は上場しておらず、国内で上場している釣具メーカーとなればティムコが候補に上がります。国内に上場している釣り具メーカーという点で、3社を比較していきましょう。
目次
1. 釣り具メーカーの製品
リールやロッド、ルアーや釣り仕掛けといった釣り道具一式に加え、アパレル(釣り用ウェアやズボン、磯靴)、バッグやクーラーボックス、釣り糸、ハサミなど小物類に至るまで様々な商品を扱っています。
2. 釣り具市場のトレンド
2011年から2022年の10年間にわたり、一貫して増加傾向にあります。
2020年のコロナ禍を機としてメディアでも盛んに"釣りブーム"が取り沙汰されるようになりましたが、2019年→2020年で釣り用品市場は大きく増加していることがわかります。
引用 ティムコ決算説明補足資料
3. シマノ、グローブライド、ティムコの売上規模
3社の売上規模、営業利益率を見ていきます。(シマノは2021年度12月期、グローブライドは2022年度3月期、ティムコは2021年11月期の数字)
会社 | 売上高[百万円] | 営業利益率[全ての事業] | 営業利益率[釣り具事業] | 釣り具部門の売上比率 |
---|---|---|---|---|
シマノ | 546515 | 27.1% | 22.6% | 18.7% |
グローブライド | 120684 | 10.2% | 10%前後(※) | 89.7% |
ティムコ | 2951 | -0.88% | 15.8% | 36.4% |
(※)グローブライドの部門ごとの営業利益はHPで開示されていなかったため、10%前後とした。)
シマノの営業利益率の高さが目立ちますね。
シマノとグローブライドはリールやロッドのシェアを2分していますが、売上規模で言えばシマノがグローブライドの4.5倍ほどあります。シマノは自転車のコンポーネント(部品)事業を主力としており、釣り具部門の売上比率は18.7%しかありません。
釣り具部門の売上高を計算すると、
釣り具の売上高比率
シマノ
546515×0.187 = 約102200百万円
グローブライド
120684×0.897 = 約108300百万円
となり、グローブライドの方が僅かに釣り具でのシェアは高いようです。
ちなみに、釣り具メーカーの売上高の世界ランキングは以下のようになります。
引用 deallab
順位 会社名 市場シェア 1位 グローブライド 7.4% 2位 シマノ 7.0% 3位 ピュアフィッシング 4.3% 4位 ラパラVMC 2.6% 釣り具 世界シェア(2021年)
1位、2位はグローブライド、シマノと日本のメーカーが独占しています。
3位のピュアフィッシングは、アブガルシア、バークレーといったブランドを持つアメリカの総合釣り具メーカー。
4位はフィンランドのラパラです。これは少し意外でした。カウントダウンやシャッドラップといった木製ルアーで有名ですが、ロッドやリールに至るまで総合展開しています。
4. シマノ
シマノの売上、当期純利益率を見ていきましょう。
過去5年間で売上、利益とも上昇傾向です。2022年の1~9月間ですでに前年と同程度の当期純利益を稼いでおり、2022年度は増収増益が見込まれています。
次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。
セグメント | 売上比 | 営業利益率 |
---|---|---|
自転車 | 81.2% | 28.2% |
釣り具 | 18.8% | 22.6% |
私たちシマノは、世界のトップレーサーが使用する競技用自転車から生活に密着した自転車に至るまで、世界中のさまざまな自転車に高品質で高性能なパーツを供給しています。
シマノ HP
レースの世界においてのシマノのフラッグシップモデル「DURA-ACE」には、シマノの最先端の技術を導入しています。その可能性を高める一つの方向として開発した電子デバイスとの融合、Di2(Digital Integrated Intelligence)テクノロジーは、変速の確実性とスピードを格段に向上させました。
自転車事業の利益率は圧巻ですね。
他にもボート競技にも参入しています。自転車事業で培ったビンディングのシステムを応用しているとのことです。
財務(2022.9)
シマノ
総資産 832396[百万円]
自己資本 743774
自己資本比率 89.4%
利益剰余金 623448
有利子負債 900
ROE 20.2%
【キャッシュフロー】[億円] (カッコ内は前年)
営業 1124 (910)
投資 -201 (-283)
財務 -587 (-179)
現金同等物 3577 (3001)
総資産に対する利益剰余金の多さと、有利子負債の少なさ、現金の多さが財務基盤の安定性を示しています。キャッシュフローについても、営業ー投資で定義されるフリーキャッシュフローが2年連続で増えており、現金が積み上がっています。
5. グローブライド
グローブライドの売上、当期純利益率を見ていきましょう。
次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。
セグメント | 売上比 |
---|---|
釣り具 | 91% |
ゴルフ用品 | 5% |
スポーツ用品 | 4% |
スポーツ用品: ラケット用品、サイクルスポーツ(自転車)など
セグメント別の営業利益率は開示されていませんでしたが、ゴルフ用品の売上の伸び率は前年比+50.5%であり最も勢いのある事業分野といえます。
財務(2022.9)
グローブライド
総資産 105057[百万円]
自己資本 47423
自己資本比率 45.1%
利益剰余金 37114
有利子負債 20779
ROE 29.6%
【キャッシュフロー】[百万円] (カッコ内は前年)
営業 6956 (15842)
投資 -6847 (-3376)
財務 -2470 (-8356)
現金同等物 7149 (9157)
大株主
3位に総合商社の丸紅が入っています。
6. ティムコ
ティムコの売上、当期純利益率を見ていきましょう。
過去5年間のうち赤字になった年が3年間あり、収益力の低さは否めません。
次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。
セグメント | 売上比 | 営業利益率 |
---|---|---|
釣り具 | 36.1% | 15.8% |
アウトドア事業 | 63.0% | -1.3% |
その他 | 0.9% | 73.6% |
アウトドア部門 :
1982年1月フライフィッシングをルーツとするアウトドア衣料「フォックスファイヤー」を発売。ティムコ初のオリジナル商品として、アウトドア事業への展開を開始。
ティムコ HP
釣り用ジャケットやウェーダーから始まり、今ではアウトドア全般の衣類を販売しています。
その他 : 不動産賃貸事業であり、営業利益率は73.6%です。
財務(2022.8)
ティムコ
総資産 5434[百万円]
自己資本 4546
自己資本比率 83.7%
利益剰余金 106
有利子負債 0
ROE -0.2%
【キャッシュフロー】[百万円] (カッコ内は前年)
営業 195 (-272)
投資 -127 (317)
財務 -19 (-35)
現金同等物 629 (578)
長年赤字を出し続けているからか、利益剰余金がかなり少ないですね。自己資本比率が高く、有利子負債も0、現金もそれなりにあり不動産を持っていることから倒産する危険性は低そうですが収益力が低いため、会社規模の拡大は難しそうに見えます。
大株主
2位 スノーピーク
2019年にアウトドア用品大手のスノーピークと資本業務提携契約と締結しており、大株主となっています。他には社長一族の酒井家が多くを占め、オーナーばり株式会社も名を連ねています。
7. 社員の年収、平均年齢
年収 | 平均年齢 | 社員数 | |
シマノ | 851万円 | 40.2歳 | 単1507人 |
グローブライド | 669万円 | 42.7歳 | 単808人 |
ティムコ | 505万円 | 46.8歳 | 68人 |
3社間の違いがはっきりとしています。シマノの平均年収が最も高く、年齢は最も若く、社員数も多いです。ティムコはその逆の傾向にあり、グローブライドはその中間といえます。
8. まとめ
これまでシマノ、グローブライド、ティムコの3社の違いについてまとめました。釣り具事業の利益率は総じて高く、また市場規模も大きくなることが見込まれています。一釣り好きとして、3社の動向をこれからもウォッチしていこうと思います。