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ポンプメーカー大手5社を徹底比較(荏原、日機装、酉島製作所、鶴見製作所、イワキ)

2023年1月4日

国内大手ポンプメーカー5社(荏原、日機装、酉島製作所、鶴見製作所、イワキ)の売上高推移、利益率、それぞれの強みについて比較していきます。

5社の売上高のランキングは以下のようになります。

  • 荏原     603213[百万円](2021.12) <東証プライム : 6361>
  • 日機装    167759[百万円](2021.12) <東証プライム : 6376>
  • 酉島製作所  52240[百万円](2022.3)  <東証プライム : 6363>
  • 鶴見製作所  51214[百万円](2022.3)   <東証プライム : 6351>
  • イワキ    32439[百万円](2022.3)  <東証プライム : 6237>


メーカーの製品

ポンプとは液体に位置エネルギー、もしくは運動エネルギーを与え、液体を高所まで運んだり循環させる機器を指します。

そのため井戸や農業用ポンプといった家庭向けから、工業用プラント(発電や石油精製、ボイラーなど)まであらゆる場所で利用されています。



ポンプの需要

Grand View Research社によると、2022年から2030年にかけての米国の工業用ポンプの需要は年平均4.9%の増加が見込まれています。

ポンプは水、排水や化学、石油やガス、発電といったあらゆる分野で導入できる余地があるため、ポンプの需要は堅調に増加すると見られます。

The global industrial pumps market size was valued at USD 61.63 billion in 2021 and is expected to expand at a compound annual growth rate (CAGR) of 4.9% from 2022 to 2030. The rising adoption of these products in various industries, including water and wastewater, chemical, oil and gas, and power generation, is expected to have a positive impact on the market growth.

引用 Grand View Research


ポンプメーカーの売上規模

5社の売上規模、営業利益率を見ていきます。(荏原、日機装は2021年度12月期、酉島製作所、鶴見製作所、イワキは2022年度3月期の数字)

売上高[百万円]営業利益率海外売上比率
荏原60321310.2%59%
日機装1677591.9%62%
酉島製作所522408.5%46%
鶴見製作所5121410.8%24%
イワキ324396.6%45%

荏原、鶴見製作所の営業利益率が10%代であるのに対し、日機装の営業利益率は1.9%となっています。

また鶴見製作所の海外売上比率は他の4社と比べて低めになっています。

ちなみに海外企業も含めると、日本のポンプメーカーの売上高ランキングは以下のようになります。引用 deallab

国内ポンプメーカーの世界ランキング

1位 グルンドフォス  6.99% (デンマーク)

5位 荏原製作所   2.79%

12位 日機装     1.30% 


荏原

荏原の売上、当期純利益率を見ていきましょう。


2019202020212022(予想)
売上高(連結)522424523727603213670000
当期純利益23349244734361646500
単位[百万円]

過去5年間で売上、利益とも上昇傾向です。

次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。

売上比営業利益率
風水力55.5%7.4%
環境プラント11.9%7.8%
精密、電子31.9%14.5%

事業構成

風水力事業 : 標準ポンプ事業はこの中に含まれ、陸上ポンプ、水中ポンプ、給水ポンプユニット、消化ポンプユニット、ファン(気体を送るための機械)を扱う。

他にもインフラ設備の新規建設やアフターサービスを行うシステム事業、幅広い顧客仕様や国際規格に合わせて最適なポンプを選定し、提供するカスタムポンプ事業が含まれる。

環境プラント事業 : ゴミ処理施設、エネルギープラントなど

精密、電子事業 : 2021年度12月期において最も営業利益率が高いセグメント。詳細は以下の引用。

半導体製造に欠かせないCMP装置を始め、ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置、オゾン水製造装置など様々な製品を世界中に供給しています。高性能、高信頼性、安心のサポート体制により、多様な分野で採用が進んでいます。半導体分野のみならず、化学、医薬、その他の製造業や研究開発用途で荏原製作所の製品が活躍しています。

荏原 HP


日機装

日機装の売上、当期純利益率を見ていきましょう。


2019202020212022(予想)
売上高(連結)165780158542167759180000
当期純利益6813656022116500
単位[百万円]

2022年度は子会社の売却益が利益に上乗せされる見込みで、過去4年間と比べると予想当期純利益が跳ね上がっています。

次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。

売上比営業利益率
工業部門56.9%4.5%
医療部門43.1%4.2%

事業構成

工業部門: 化学用精密ポンプ首位。特殊ポンプ(高圧・無漏洩・極低温等、過酷な条件下でのポンプ)が強い。

医療部門 : 透析装置・消耗品、人工腎臓などを販売。国内の透析装置のシェアは50%を超えている。

工業用ポンプとのシナジーを活かして、医療の透析分野に強みを持っています。

酉島製作所

酉島製作所の売上、当期純利益率を見ていきましょう。


2019202020212022
売上高(連結)48154471265078752240
当期純利益218354333533626
単位[百万円]

2022年度3月期に最高益更新。2023年度も最高益更新が見込まれています。

次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。

売上比
ハイテクポンプ42.8%
プロジェクト33.3%
サービス22.4%
新エネルギー、環境1.6%

事業構成

ハイテクポンプ : 発電所や海水淡水化プラント、上下水道施設、かんがい施設など向けの大型ポンプ(エンジニアリングポンプ)及び一般産業向けのエコポンプ(小型標準ポンプ)

プロジェクト : 上下水道、かんがい、排水ポンプ場におけるポンプ設備全体のEPC(設計・調達・建設)案件

サービス : 既存ポンプ及びポンプ設備の取替え、保守点検、部品交換など

新エネルギー、環境 : 風力発電や小水力発電の導入における設計・施工・メンテナンス。環境装置(農業集落排水向け真空式下水道収集システム)

4つのセグメントの中でも特にハイテクポンプ分野が前年比+92.7%と好調。これはエジプト向けの農業用灌漑ポンプ特需のため。

次に新エネルギー、環境分野は前年比+46.5%と好調。脱炭素、カーボンニュートラルの流れを受け、株式会社JERAが進める日本初のアンモニア20%混焼発電の実証事業に参画。

大株主

7位 タクマ

環境プラント大手のタクマが大株主入りしています。酉島製作所の本社とタクマの本社は位置的に近く、ごみ処理プラントの建設にはポンプが必要になるためと考えられます。

鶴見製作所

鶴見製作所の売上、当期純利益率を見ていきましょう。


2019202020212022
売上高(連結)43461456044532551214
当期純利益4013395241564817
単位[百万円]

概ね増収増益の傾向ですね。

製品の事業ごとの売上比、利益率はHPで開示されていませんでしたが、国内、海外部門ごとの概況が開示されていたので以下に示します。

事業構成

国内部門 : 建設機械市場におきましてレンタル業界向けに、環境に配慮した電極式水中ポンプや高圧洗浄機の売上が好調に推移しました。設備機器市場におきましては、官公庁向けの豪雨対策等のインフラ整備関連事業の受注は拡大しましたが、工具工場設備市場向けの需要は横ばいで推移しました。

海外部門 : 北米市場をはじめとして引き続き建設、鉱山市場で活発な需要が続きました。北米市場におきましては、インフレの急伸やFRBによる金利引き上げ等により需要の低迷や買い控えの懸念はありますが、鉱山市場、建設市場は引き続き活況であり受注は好調に推移しました。 

引用

鶴見製作所は水中ポンプ(土木、建設用、洪水対策、親水設備)に強みを持ち、国内一のシェア(約3割)を持ちます。

大株主

10位 デンヨー

エンジン発電機、溶接機大手のデンヨーが大株主入りしています。他には社長一族の辻本家もランクインしています。

イワキ

イワキの売上、当期純利益率を見ていきましょう。


2019202020212022
売上高(連結)29171286362816232439
当期純利益2163212220912396
単位[百万円]

概ね増収増益の傾向です。

次に、セグメント別売上比、営業利益率を見ていきましょう。

売上比
マグネットポンプ33%
定量ポンプ17%
空気駆動ポンプ13%
回転容積ポンプ7%
エアーポンプ5%
その他25%

化学薬液の移送用ケミカルポンプに強みを持ちます。ケミカルポンプが扱う液体の中には(人体に有害な硫酸等)危険な液体もあるため、漏れないよう非常に高い安全性が求められます。同社のケミカルポンプは以下のように細分化されます。

事業構成

マグネットポンプ : 化学薬品に耐える耐食性と液漏れがない安全性を両立。

定量ポンプ : 常に一定量の薬液を送液し、吐出量の再現性に優れる。

空気駆動ポンプ : 半導体・液晶市場向け

回転容積ポンプ : 特殊な溶液(粘性液、スラリー液)の移送が可能。

エアーポンプ : 液体を扱う上述の4つとは異なり、空気の送気、吸気を行う。

引用 イワキHP


社員の年収、平均年齢

平均年収平均年齢社員数
荏原757万円43.9歳単4266人
日機装603万円42.3歳単2011人
酉島製作所576万円38.3歳単953人
鶴見製作所595万円41.0歳単867人
イワキ656万円42.2歳単795人

売上高が多い会社順に社員数は多くなっており、従業員一人当たりの売上高は5社ともおおよそ同じであることがわかります。

しかし、社員の年収は必ずしも会社の規模と一致しておらず、イワキの平均年収は656万円と、荏原の757万円に次ぐ2位となっています。

酉島製作所は5社の中では平均年収が最も低く、また平均年齢も最も低いことから、給料が低い傾向にある若手社員の割合が大きいことがわかります。

まとめ

これまでポンプメーカー大手5社(荏原、日機装、酉島製作所、鶴見製作所、イワキ)の3社の違いについてまとめました。それぞれの会社の強みをまとめると以下のようになります。

まとめ

荏原 : 半導体製造装置(精密、電子セグメント)

日機装 : 医療分野(透析装置)

酉島製作所 : 海外向けの海水淡水化プラント、灌漑施設

鶴見製作所 : 土木建設用の水中ポンプ

イワキ : 化学薬液の移送用ケミカルポンプ

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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